第5回欧州手術見学ツアーレポート❷
2017年10月8日~10月14日に実施した第5回欧州手術見学ツアーを参加者4名がレポートいたします。
第5回欧州手術見学報告記 名古屋大学医学部附属病院整形外科 伊藤 研悠
第5回JPSTSS欧州手術見学の貴重な機会をいただきましたのでご報告いたします。オクスフォードに集合しOxford Universityでの手術見学、そしてダブリンに移動しIGASS発表、手術見学を行う日程でした。2チームに別れましたので、自分のチームの報告となります。まずイギリスはNHS(National Health Service。原則無料だが家庭医の紹介が必要で待ちが長い。医師や機関の選択不可。)とprivate(全額自己負担だが待ちは少なく医師や機関選択自由。救急対応はない。)の二つに別れており、NHSを用いて国がコントロールしている背景があります。アイルランドも同様の方法をとっていました。Oxford Universityは世界大学ランキングで常に上位となり皇太子徳仁親王や雅子様が学ばれた所としても有名ですが、決まった一つの大学があるわけでなく40大学が合わさった総称です。Oxford University Hospitalsも同様にJohn Radcliffe Hospital、Churchill Hospital、Nuffield Orthopaedic Centre、Horton General Hospitalの4つからなる総称です。Drはこの4つを回り診療をされていました。今回John Radcliffe Hospitalにて手術見学いたしました(図1)。
図1. John Radcliffe Hospitalにて。左から熊野洋先生、隈元真志先生、筆者、梅林猛先生
本病院は特に脊椎腫瘍に力を入れており、spinal osteosarcomaが15-20症例/年とのことで驚愕しました。NHSによる症例集積がなされていると感じました。これをJeremy Reynolds先生とDominique A. Rothefluh先生の二人が中心となり行っていきます。今回もosteosarcoma症例を用意してくださったのですがmetaにて中止となり、化膿性脊椎炎L1圧潰の後弯症に対する前後合併矯正固定術を見せてくださいました。生憎、手術室内は写真撮影禁止であり紹介できませんが大変勉強になりました。
図2. Our Lady’s Children’s Hospital. National Hospitalにて歴史を感じます
ダブリンではOur Lady’s Children’s HospitalにてPatrick Kiely先生の手術を見学しました(図2)。Kiely先生はprivate hospitalとnational hospitalを行き来しており、成人から小児まで治療されます(図3)。今回、9歳男児の症候群性側弯症に対するgrowing rodを見学しました。Upperとlower foundation共に6本ずつscrewを入れていました。また術中tractionはHarrington systemを用いて骨盤と肋骨で伸展していました(図4)。頭蓋-大腿牽引より力が働くことがメリットですが別皮切となることがデメリットとのことでした。
図3. Patrick Kiely先生. C-armのheadは小さくPS挿入の邪魔にならない
図4. Growing rod術野. Harrington systemで伸展
本fellowshipを通し手術見学、医療制度など大変勉強になりました。しかしそれ以上に日本の先生方や現地の先生方と交流し貴重なお話を伺えたことがなによりの財産となりました。このような貴重な機会を与えてくださった熊野潔先生、山崎昭義先生、また大変なスケジュール調整をしてくださった熊野洋先生とJPSTSS事務局の皆様に深謝申し上げます。