JPSTSS 一般社団法人 日本脊椎・脊髄手術手技学会

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5th Europe tour report ❸

第5回欧州手術見学ツアーレポート❸
2017年10月8日~10月14日に実施した第5回欧州手術見学ツアーを参加者4名がレポートいたします。

EUROSPINE 2017参加報告 手稲渓仁会病院整形外科脊椎脊髄センター 脳神経外科医 青山 剛

 本年初めて,欧州手術見学およびIGASS meetingに参加させていただきました。今年も昨年に引き続き,EUROSPINE meetingと合わせて参加しやすいよう,日程および開催地が選ばれております。手術見学とIGASS meetingの報告は他の先生より行なっていただいたので,私はEUROSPINE meetingについて報告致します。

 本年のEUROSPINE meetingは10月11日から13日までの3日間,そして前日の10日はpre-day courseがアイルランドの首都ダブリン,Convention Center Dublin(CCD)で開催されました。演題はoral 75題,short oral 80題と厳選されているものの,基礎から大掛かりな手術に関するものまで,脊椎脊髄疾患のほぼ全領域をバランスよく網羅しております。その他,debate session, lumch symposium,企業主催のランチョンセミナーがあります。

青山 剛

学会場のCCD(Convention Center Dublin)

 その中で印象に残った演題をいくつか紹介します。1つ目はギリシャからで,軽度の側弯に対して過剰な装具治療が多く行なわれているとのことで,それに対し座長が教育の重要性を知らしめるすばらしい発表だとのコメントをしていました。当初はギリシャの国民性を想像しましたが,ふと我が国を振り返れば,やはり教育の重要性を感じることが多々あります。国は違えど共通の問題を有していることが実感できます。2つ目は,多くの腰椎変性疾患に対して行なわれている固定術は除圧術に比べて長期的な利益はない,とのスウェーデンからの発表です。手術第一と思われる先生からの反論はありましたし,症例選択の問題もあるかとは思います。それでもこのような発表を聞けるのが本学会の良さであるとは感じます。またスウェーデンは(およびノルウェー,デンマークも)脊椎手術患者の登録制があり,他施設の症例も含めた研究が容易にできます。個々の症例の詳細はわからないという欠点もありますが,症例数も学会の採択に重要である現実はあり,日本でもできないものかとは思ってしまいます。3つ目は,頚椎の1椎間神経根症に対するarthroplastyは費用に見合った効果はないという発表です。過去の学会でも頚椎のarthroplastyへの否定的な発表が多く逆に肯定的な意見は少ない印象でした。近い将来日本でも導入されると聞いていますが,その使用へは慎重な検討が必要かとは感じてしまいました。本邦からも発表は多数ありました。技術的には世界に並んでいることを国際学会では感じることができます。特徴と言えば他国に類を見ない急速な高齢化率であり,今後も超高齢化社会に特有な医療事情の発信は重要です。

青山 剛

学会場風景

 手術の技術だけに限れば国内学会への参加で十分かとは思います。しかし世界の中での日本の位置,これから日本はどのように変化するべきなのか,また日本から発信できることはなんであるか。それを実感できることが,国際学会へ参加する意義かとは思います。また国内学会では同門,知り合いだけで固まりがちですが,国際学会では日本人というだけで集まります。国内のネットワークを広げられるのも,意外な意義かもしれません。

青山 剛

Welcome reception Irish dancing

 来年の学会はスペイン・バルセロナで9月19日—21日の会期で行なわれます。そこへの参加を目標として,今後も日々の仕事に励んで参ります。そして来年もまた,手術見学旅行のお伴をさせていただきたく思います。最後に,本年の見学旅行コンダクターの熊野潔先生、山崎昭義先生,マネージャーの熊野洋先生,そして旅行中お世話になった参加者の先生方に,厚くお礼申し上げます。

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