第4回欧州手術見学ツアーレポート❶
2016年10月2日~10月7日に実施した第4回欧州手術見学ツアーを参加者5名がレポートいたします。
Berlinチーム 浜松医科大学整形外科 坂野 友啓
平成26年9月26日、27日に行われました第21回JPSTSSにて“成人脊柱変形手術におけるフリーハンド腸骨スクリュー刺入精度の推移”という発表をさせていただき、それをまとめた論文でBest paper賞をいただきました。その副賞として欧州手術見学旅行に参加してきました。その中で10月6日に訪れたベルリンにあるCharite Universitätsmedizin Berlinでの手術見学について報告いたします。訪問するまでは知りませんでしたが、Charite病院は300年の歴史を誇る大変由緒ある大学病院のようです。静脈血栓の形成に関わるVilchow3徴として有名なルドルフウィルヒョーを輩出したヨーロッパ最大の大学病院であります。
今回お世話になったのは脳外科のProf. Peter Vajkoczyの教室です。当教室は、脳領域では脳腫瘍、脳血管病変、脊椎領域ではMIS手術から脊柱変形まで幅広く扱い、年間手術件数は4000件にも及ぶそうです。Vajkoczy先生はまだ若く長身イケメンで、教室にもたくさんの活気のあるstaffが所属しており我々を温かく迎え入れてくださいました。
Prof. Vajkoczy教室の先生方と一緒に
朝の7時半からカンファレンスが始まり、緊急入院症例やその日の手術症例などが討議されていました。別の病院と中継をつないでネット中継カンファレンスをしているのが斬新でした。手術は3列で8時過ぎから始まり夜に及ぶまで予定がびっしり組まれていました。頚椎椎弓切除+後方固定(こちらでは椎弓形成術はあまりされないようでした)、PSO、腰椎前方後方固定術(BKP後感染)の3列で始まりました。脳外科の特徴でしょうか?顕微鏡を使うことが多く、ノミはめったに使わずにエアトームを使用し、非常に丁寧な手術が行われていました。また、椎弓根スクリューにセメントaugmentationを併用し、BKPの適応なども含めて日本よりも積極的にセメントを使用していることが印象的でした。
Charite病院 手術風景 左がProf. Vajkoczy
17時まで手術を見学し、その後にお互いのプレゼンテーションの時間がもたれました。こちらからは三楽病院の佐野先生と私が15分ずつ講演を行いました。私は浜松医大が行っている脊柱変形手術の研究や手術ビデオを交えてのケースプレゼンテーションなどを、佐野先生は三楽フォーミュラを中心とした脊柱変形手術ストラテジーに関しての内容でした。Charite病院では若い先生方も精力的に研究されており、悪性腫瘍骨転移に関する基礎研究、仙腸関節痛に関する臨床研究、脊柱変形を有する脊柱管狭窄症に関する研究の口演を拝聴しました。脊椎疾患に関してお互いに知識を共有し、議論できたことは非常に有意義なことでした。
カンファレンスでの筆者の発表
夜はベルリン市内の郷土料理のお店で合同食事会が開催されました。ドイツの伝統的料理に舌鼓を打ちながら楽しい時間を過ごさせていただきました。可愛いおばちゃんがドイツの伝統的な歌を歌いその場を盛り上げてくれました。また、熊野先生、佐野先生の計らいでお互いに英語で自己紹介、質問などをする時間が持てました。ドイツの人は非常に流暢な英語を話され、改めて自分の英語力のなさを実感した次第であります。しかし、私にとって手術見学旅行を通して海外医師と交流したことは初めてでしたし、非常に貴重な時間でした。この経験を生かしてこれからも海外に発信できるような成果を出し、globalな整形外科医となれればいいなと思っております。 末筆になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった熊野先生、佐野先生、そして我々の旅行をサポートしてくださったJPSTSS学会事務局の瓦間さんにこの場をお借りして深く感謝申し上げます。