JPSTSS 一般社団法人 日本脊椎・脊髄手術手技学会

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7th Europe tour report ❶

第7回欧州手術見学ツアーレポート❶
2019年10月14日~10月18日に実施した第7回欧州手術見学ツアーを参加者8名がレポートいたします。

第7回欧州手術見学に参加して 横浜労災病院 整形外科脊椎脊髄外科 齊木 文子

齊木 文子

2019年10月13日から17日までCopenhagenとHelsinkiで行われた手術見学に参加しましたので報告いたします。私は後半のレポートを書くように仰せつかりましたので、Helsinkiでのレポートをさせていただきます。

●10月14日

CopenhagenでDr. GehrchenのPSOを見学した後、空路でHelsinkiに向かいました。HelsinkiではIGASS forum(必須)、EUROSPINE (任意)の学会参加と、Turku大学での手術見学が予定されています。到着時にはもう日が暮れており、Copenhagenよりも更に寒いと感じました。ホテル到着後にディナーとなりましたが、そこでやっと台風19号のため飛行機が飛ばずにCopenhagenに来ることができなかった半井宏侑先生が合流できました。

●10月15日

齊木 文子

Helsinkiでの滞在中に晴天だったのはこの日だけでした。市内のClarion hotelでIGASS(International Group for Advancement in Spinal Science) forumが開催されました。このツアーのコンダクターの山崎昭義先生が学会の前身のころからfacultyをされていて、そのご縁で山崎先生と熊野潔先生は毎年参加されているとのことでした。
30人ほどのどちらかというとアットホームな雰囲気の学会で参加者が積極的に意見や質問をして、とても活発なdiscussionがされていました。今回のテーマは“Old Problems-New Solutions”で、腫瘍・Parkinson・新技術のpit fallの3部門に分かれていました。14演題のうち演題は腫瘍が最も多く、私もspinal glioblastomaの症例を発表しました。発表の最中にもどんど質問が来るのですが、英語の質問についていけずに、Copenhagenでお世話になったDr. Gehrchenに助け舟を出していただくなど、自分の英語力のなさを改めて痛感しました。夜は学会のディナーで、トナカイの肉とワインをおいしくいただきました。

●10月16日

齊木 文子

Helsinkiでのmain eventのTurku大学でのDr. Helenius Ilkka Juhaniの手術見学です。Dr. Heleniusは小児脊椎が専門です。私の勤務する横浜労災病院でも小児脊椎の手術が多く行われているので、出発前から楽しみにしていました。朝の5時、まだ外は真っ暗な中、Turkuにむけて大型タクシーで出発しました。Turkuはフィンランド第3の都市で、Helsinkiから車で3時間弱の場所にあります。到着するとDr. Heleniusが入り口までむかえにきてくれて、医局に案内して下さいました。医局では温かいコーヒーとサンドウィッチが用意されており、朝食をいただきながら、Dr. Heleniusの講義をうけました。講義の内容は主に、EOSに対するmagnetically controlled growing rodについてでした。Traditional growing rodしか見たことも、知識もなかった私にとって、MCGRsは初めてきくもので、イメージするのが難しかったのですが、質問にも丁寧に答えてくださいました。講義が終わると手術見学です。今回はAISに対するanterior spinal growth tetheringを見学しました。初めてみる術式ですが、Dr.Hereniusもこの症例が7例目とのことでした。症例はLenke Type 3の13歳の女児で、T6-T12の範囲でのnon fusion surgeryでした。手術室には2人入れるとのことでしたが、他の参加された先生方が、グループの年少であった半井先生と私に入らせてくださり、2人で手洗いすることができました。他の先生方は別室でモニター越しに見学されました。

齊木 文子

術者はDr. Helenius、助手は小児整形(脊椎ではないとのことでした)が専門の女性の先生でした。convex sideから経胸膜アプローチで進入し、肋骨は落とさずに開胸器で展開しました。スクリュー挿入はすべてイメージ下で行うのですが、助手の先生が我々のために最初から胸腔鏡を創部に直接入れていてくれたため、モニター越しに術野をよく観察することができました。T10-12は、segmental arteryをisolationして可動性を出した後によけてステープルを打ち込んだ後、そこにHAコーティングされたスクリューを挿入しました。T6-9のsegmentalは焼灼切離していました。T6,7のスクリューは最初の切開部分からは操作困難であったため、ポータルを作成してそこから胸腔鏡アシストのもと挿入しました。

全てのスクリューを挿入した後にそこに4mm径のポリエチレン製のcordを通し、tensionをかけて矯正しました。皮切から閉創まで3時間ほどだったと思います。術中の矯正に加え、今後のconcave sideの成長にともない更に矯正がかかる、ということでした。Anterior spinal growth tetheringに関してはPeter Newtonが2018年にJBJSで術後2-4年のoutcomeを報告しています。59%で良好な経過を得ているとのことですが、成長期におけるmid-termでの報告であり、さらなる経過の報告が待たれるところかと思います。成長に伴いsagittal alignmentがどうなっていくかも興味深いです。

側弯の前方法は後方法の発展で選択されることが少なくなってきたと教わり、実際に側弯手術で前方法を見たことはありませんでした。今回、従来の前方法とは異なったコンセプトの前方法をみることが出来たことにより、過去から現在に至る側弯手術の歴史を調べることになり、大変勉強になりました。

齊木 文子

手術の後は皆で学食ランチをした後に、大学を後にしました。Helsinkiまでは帰りは電車で帰ることになっていたので、大学からTurku駅まで20分ほどの道のりを途中で大聖堂に寄ったりしながらのんびりと散歩しました。フィンランドの紅葉は、日本と違い葉がほぼ黄色です。黄色の葉っぱでいっぱいのほとんど人がいない静かな道を、皆で歩いたことはとてもいい思い出です。夜はGaleazzi HospitalのDr. Pedro BerjanoとBordeaux UniversityのDr. Ibrahim Obeidも合流してタイ料理を楽しみました。

●10月17日

最終日は自由行動でした。EUROSPINEの発表のためHelsinkiに来ていた、先輩の竹下祐次郎先生と半井先生と、フェリーに乗ってバルト3国のひとつ、エストニアの首都タリンへの日帰り小旅行を楽しみました。夜はついにお別れディナーでした。湾の眺めが素敵なロマンチックなレストランで皆で別れを惜しみました。ツアーはこれで全日程が終了となり、解散後は各々帰途につきました。

●全日程をおえて

CopenhagenでもTurkuでも、手術内容に加え、向こうの先生方の淀みなく進む手術の速さに大変驚きました。そのことをディナーの席で話した時に、Dr. Obeidが“手術中に考えることは一切ない、なぜならば術前に全てプラニングしているから。“とおっしゃっていたのが印象的でした。また、同行の先生方との会話の中で、手術方法や後療法も、施設によって違う!ということに改めて驚きました。普段他の医局の先生方と話す機会が少ないので、このようにいろんな医局の方とお話することが大変勉強に、また、刺激になりました。熊野潔先生、長谷斉先生、山崎昭義先生、和田圭司先生、和泉智博先生、熊野洋先生、半井宏侑先生、大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。今回の旅で学んだことを生かして日々精進していこうと思います。

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