第7回欧州手術見学ツアーレポート❸
2019年10月14日~10月18日に実施した第7回欧州手術見学ツアーを参加者8名がレポートいたします。
ベストペーパー賞2018受賞者として 新潟中央病院 整形外科 脊椎脊髄外科センター 和泉 智博
2018年の第25回JPSTSS学術集会にて新潟中央病院での症例をまとめた論文である「C5麻痺に対する予防的椎間孔拡大術を併用した頚椎椎弓形成術における脊髄後方移動の検討」がBest paper賞を頂きました。その副賞として第7回欧州手術見学に参加させて頂きましたので、その報告をさせて頂きます。
●10月13日
今回の欧州手術見学の始まりは、10月12日の台風19号の襲来から始まりました。予定運休もあり、予定を早めてなんとか東京に到着し、翌日のフライトの時間までをホテルで過ごしていました。その時にテレビで見ている被害が近くで起こっていると知り、台風の恐ろしさを痛感しました。大きな風音で夜中に何度も目が覚めたのを覚えています。翌日には天候は回復していても交通状況の回復は得られない中、なんとか成田に到着することができました。幸運にもフライトの若干の遅れで10月13日夕方にはコンダクタの山崎先生と共にコペンハーゲンに到着することができました。ホテル到着後にロビーにて、コンダクタの熊野潔先生、長谷斉先生、山崎昭義先生、マネージャーの熊野洋先生、東京女子医科大学 和田圭司先生、横浜労災病院 斎木文子先生と顔合わせをさせて頂きました。その後は全員で翌日に手術見学をさせて頂くRigshospitalet and University of Copenhagen のMartin Gehrchen先生と夕食を御一緒させて頂きました。楽しいお話と地ビールとハロウィンの夜景を楽しみました。
●10月14日
こ10月14日は私にとって人生初となる海外での手術見学でした。手術の準備が整うまでは、Martin先生に講義をして頂きました。これから手術をするPJKを繰り返す患者の長い歴史とともに、その治療法や考え方を丁寧に教えて頂きました。
講義後は手術室に向かい、2名ずつ手術の助手に入らせて頂けるとのことで最初に斉木先生と助手をさせて頂きました。手洗いを終え手術室に入ると、すぐ横に大きな窓があり、外の景色や向かいの病棟が見え、日本では考えられない日の光を感じる手術室に驚きました。さらに、今回の手術では麻酔科を含めて全てのスタッフの出身国が違うと聞き驚きました。私達では出身県が違う位の感覚だと思いますが、海外では国や人種を越えて一つの治療を行っていることを体験できました。見学終了後はコペンハーゲンを後にしてヘルシンキへ向かいました。夕食会から台風の影響で到着が遅れた関東労災病院 半井宏侑先生と合流し、参加者全員がそろいました。
●10月15日
10月15日はIGASSでの発表の緊張もあり早く目が覚めたので朝食がてら街を散策しました。7時半頃にホテルを出ましたが、まだ夜も明けておらず、気温も0度であり、自分が北欧にいることを実感しました。午前中の寒い中に13th IGASS forumの会場へ全員で向かいました。実は私自身としてIGASSの参加は2回目であり、初回はEurospine in Liverpoolの時に山崎先生に連れて行って頂きました。その時は発表をただ聴くだけの参加でしたが、今回は症例の発表者としての参加であり非常に緊張をしました。IGASSでは様々な国の病院からの症例提示と討論があり、午前中の腫瘍のセッションでは様々な症例の発表があり、特に7歳のGanglioneurinomaや9歳のOsteoblastomaなどの小児の症例が印象に残っています。午後からはparkinson症例や、様々な技術のpitfall体験などの症例を勉強させて頂きました。
自分の発表では活発な討論をして頂き、わかりやすく貴重な助言も頂き、本当に貴重な体験をさせて頂きました。 夜はIGASS主催の夕食会に参加させて頂き、非常に楽しい時間を過ごし、初体験となるカモシカの肉料理を美味しく頂きました。
●10月16日
10月16日は早朝に出発し、約1時間半移動し、Turku University Hospitalの手術見学を行いました。Ilkka先生より手術症例や手術方法の講義を行って頂き、その後は施設内見学を行いました。胸腔内視鏡下での前方側弯矯正手術の見学でしたが、2人しか術野見学ができないとのことでしたので、この時は検討会室でのLive見学となりました。終了後はIlkka先生と昼食をとりながら討論をさせて頂き、多くの知識を得ることができました。見学後は帰りの電車まで時間があったため、全員でTurku市内観光をしました。病院から徒歩でTurku大聖堂を訪ね、その後にバスに乗りTurku城を見学しました。北欧独特の雰囲気があり、寒さもあり哀愁がただよっており、私の大好きな雰囲気を楽しみました。夕食はMilanoのGaleazzi HospitalのPedro Berjano先生とBordeaux大学のIbrahim Obeid先生と楽しい時間を過ごさせて頂きました。非常にたくさんの手術をこなされている中でも、御家族の時間を非常に大事にしているとのことで、仕事とプライベートの両立が大事であることを教えて頂きました。
●10月17日
10月17日は残念ながら手術見学先との手術予定が合わなかったため各自で自由行動となりました。午前中からは郊外へ出かけ、午後からはムーミンの専門店でお土産を購入したりとHelsinki観光をしました。夜は最後の夕食を参加者全員の先生と次回EurospineとIGASSが開催されるViennaで勤務されているSabitzer先生と一緒に楽しみました。和田先生とずっとビールを飲んでいたのを覚えています。
【写真右】Dr. Ronald Sabitzer (old friend from Vienna)先生を交えて
翌日は若干二日酔いのなか空港へ向かい、日本に帰国しました。
●欧州手術見学を終えて
今回の受賞は私が医師になって初めての受賞経験であり、さらに初めての海外手術見学まで経験させて頂きました。このような機会を得て、海外で活躍されている有名な先生方の手術見学をさせて頂き、脊椎・脊髄という共通の疾患を治療する医師として情報交換を行えるのは貴重な体験であり財産となります。海外で手術見学をするにあたり、日程や見学施設の確保や先生との夕食会などの調整は個人では到底困難であり、今回の海外手術見学はJPSTSS学会の尽力があって成り立つものでした。一つの発表を十分な準備して作り上げ、論文として完成させることは非常に時間もかかり苦労もあり大変なことです。しかし、このような海外手術見学が副賞であるBest paper賞を受賞すれば、その苦労は報われます。これからもJPSTSS学会が盛り上がり、多くの発表が行われ、受賞を目的とした優秀な論文投稿が増えることを祈願しこの旅行記を終わらせて頂きます。最後になりますが、このような機会を頂いたJPSTSS学会に感謝をいたします。さらに、手術見学先を予定して下さったコンダクタの熊野潔先生、長谷先生、山崎先生、細かい調整をして下さったマネージャーの熊野洋先生に深く感謝致します。そして楽しい時間を共に過ごさせて頂いた参加者の皆様に感謝します。ありがとうございました。
第7回参加者8名からのレポート
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Foreword
山崎 昭義 -
Report-1
齊木 文子 -
Report-2
和田 圭司 -
Report-3
和泉 智博 -
Report-4
半井 宏侑 -
Report-5
熊野 洋 -
Report-6
青山 剛 -
Afterword
熊野 潔